引き続き、解剖室での実習なので写真掲載がありません。文章だけでお伝えします。
デモンストレーション初日 後編
Coffe Breakから解剖室に戻ると、きれいに片付いた解剖台と整理整頓された道具が迎えてくれます。本当に気分がリフレッシュできています。
では皮切りの続きです。はじめる前にスタッフよりこれから行う解剖の説明がありました。直前に内容確認を含めた説明があるのはいいですね。
前半と比較して、インドネシア大学スタッフとのコミュニケーションが格段に進歩しています。伝えたいという気持ちと、意思を汲み取ろうとする気持ちで言葉の壁を越えているのが分かります。このあたりは女性のほうが得手かもしれません。あらかた前面の皮切りが終わり、見える範囲での筋や神経、血管の剖出に入ります。このあたりから、参考書を片手に解剖学用語が飛び交い始めました。
デイジー先生「Repeat after me. rectus femoris 」 私の後に繰り返してみて。大腿直筋
T先生&M先生「rectus femoris」大腿直筋
デイジー先生「rectus femoris」
T先生&M先生「rectus femoris」
デイジー先生「Good!」
こんな感じで、発音も同時に練習していきます。参考書は日本語・英語・ラテン語が表記されているものを準備していたので、ある程度は指差しで意思疎通が出来たようです。
脂肪組織等を除去しているときに、「代わろう」といってお互いが疲れないような配慮が自然と出てきました。どうしても時間がかかってしまうところや、剖出が難しいところはスタッフや慣れた人に手伝ってもらって、余計な疲労をしないようにすることも重要と思いました。もちろん自分でやってみたいところは、少しくらい時間がかかっても納得いくまでやりましょう。私は参加者の解剖目的を最大限に考慮します。
持参していた参考書を紹介します。
「解剖学カラーアトラス」横地千仭 Johannes W. Rohen , 医学書院
「解剖実習の手引き」寺田春水 (著), 藤田恒夫
「グレイ解剖学アトラス 」塩田 浩平, エルゼビアジャパン
「プロメテウス解剖学アトラス解剖学」坂井建雄(監訳),
「ネッター解剖学アトラス」
「実習解剖学」
終了する頃には、皆さん随分慣れてきたようで、スタッフの様々な解剖のテクニックを見るたびに歓声が解剖室に響き渡っています。決して礼儀を欠いているというわけではなく、本当に解剖を楽しんでくれているようです。様々な質問が次々に出てきます。まだまだ続けたいのでしょう、終了時間になっても一向に手が止まりません(笑)。とても良いムードを作ってくれている、日本からの参加したT先生&M先生、そしてデイジー先生に感謝です。
一方で、私と日本からの参加のH.K先生、それにDr.isabella&Dr.Diniは、皆さんが実習を行っている横で、アドバンスドコースに備えたデモンストレーションを行いました。内容は、各関節の標本を用いて、どのようにすれば関節周囲の構造がわかりやすく説明できるかを検討しました。関節の構造を理解するためには段階的に筋や靭帯、関節包等を切離する必要があるので、その手順と目的を写真撮影しながら一つ一つ確認していきました。
さて、無事にデモンストレーション初日の実習が終わりました。皆さんの様子を観察していて気づいたことは、インドネシア大学のスタッフの方々の解剖を見ていると、あまり切離をしないように思えました。手の使い方がとても上手といえばよいのでしょうか。ご遺体をできるだけ傷つけないようにしている、そんな印象です。それでいて早い。日本の皆さんの様子はというと、少し興奮気味かなと(笑)でも最初はみんなこうなると思います。初めての参加者は、道具の使い方や、これから行うことがイメージでき始めたのでしょう。ぎこちなさが無くなって堂々と解剖していました。経験者の方々は「とてもやりやすい」「関節が動かせるので手が届きやすい」「こんなに早く剖出できるなんて!」等の感想がありました。解剖し易い のも大事な要素ですね。この先ストレスや疲労が溜まってくると辛くなってくるので、そうならないようにしっかりと休息をとって実習に備えましょう。これだけ柔らかくて関節可動性があるご遺体ですから、可能な限り、筋や神経、血管を温存した状態で解剖が出来るかもしれません。これからその提案をしてみたいと思います。他にはない、関節の動きを目で見て理解できる筋骨格系の解剖が出来るのはここでの大きな魅力になりそうですね。今後もこのような状態の良いご遺体を安定して用意していただけるようです。
次回は宿泊したホテル(Wisma Makara)の紹介とトイレ事情を紹介したいと思います。
補足
インドネシア大学の筋骨格系の解剖は2つのコースがあります。コースの詳細はまだ明確に提示できませんが、このデモンストレーションでかなりのところまで詰めることが出来そうです。人体解剖が日本の医療に携わる皆様に少しでもお役にたつことを願っております。
① ベーシックコース 全体的な筋骨格系の解剖を理解する
② アドバンスドコース 各関節の周囲を含めた詳細な構造(動きを含めて)を理解する 臨床的な内容も含めます。