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2016.04.27

文献紹介 臨床に役立つ解剖実習とは

解剖学の勉強に意欲的に取り組む・・・・分かっていても中々出来ないという人も多いと思います。

「意欲的」という部分の助けとなるための副読書というのは面白いのでご紹介致します。

http://www.jrsca.jp/contents/records/contents/PDF/7-PDF/p46-47.pdf

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第10回臨床解剖研究会記録2005.5.17

臨床に役立つ解剖実習とは

―『解剖実習室へようこそ』執筆の経緯―

前田恵理子  東京大学放射線科

 

解剖実習は,献体してくださった方のご遺志があっ

て初めて成り立つ貴重な実習である.解剖学には,医

学用語の語学の勉強という側面がある.また実習を通

じて人体の精緻な構造を実感的に理解することは,系

統解剖の学習にも,spiritual な意味でも非常に大切と

思われる.従って多くの大学で解剖実習は専門課程の

最初に行われるが,最初に行うこと自体にはあまり異

存はないのではないだろうか.

しかし,最初に行うがゆえの,様々な問題も存在す

る.学生はこの時期に初めて,解剖学をはじめとして

量,質ともに教養や高校の課程とは大きく異なる専門

課程の勉強にさらされ,これに慣れることが要求され

る.生理学の知識があれば少しは効率的に学ぶことが

できることも,解剖生理学の形で履修するカリキュラ

ムではない場合は,生理学の知識がない状態で解剖を

学ぶことになる.生化学や免疫学など,他の履修科目

も平行して行われている.要は,カリキュラムをこな

す基礎力をこれからつけなくてはいけないところに,

カリキュラムが詰まっていて余裕があまりない状態で

解剖実習に取り組むのである.貴重な機会ではあるも

のの,この状態で解剖実習を活かしきることは容易で

はない.

ここで,解剖実習という作業を,4 つの段階に分け

て考えてみたい.

1)予習;実習書に書かれた実習の手順を熟読し,

手引書の解剖学用語を調べる.同時に,これから剖出

作業を行う領域の解剖を,教科書やアトラスと照らし

あわせて2 次元で把握する過程.

2)実習;予習を踏まえ,予習の段階で2 次元で把

握した解剖を,立体覚と視覚で実感しながら3次元

に起こす過程.作業の間に解剖学用語が定着する.医

学生の洗礼というspiritualな側面.

3)自習;系統解剖の教科書を読み,実習までに把

握したことを体系立てられた知識として定着させる過

程.

4)試問/試験勉強

まず,まだ臨床の概念がない時期には,頭では貴重

な実習とわかっていてもモチベーションがあがりにく

いものである.予習では,難解な手引書の記述を追う

ことに終始しがちで,医学書に不慣れなことも手伝っ

て質の高い予習が困難となる.すると,実習は予習を

もとに行う作業であるため,実習を活かしきることが

難しくなる.すると自習は,実習をもとに知識を体系

だてる過程と考えられるので,この段になって消化不

良のまま実習を終えてしまったという後悔や苦手意識

が残りがちである.実習を活かしきれず,実習をせず

に教科書を読むのとあまり変わらない結果になってし

まうのでは,実にもったいないのではないだろうか.

そこで,基礎となる予習の質を高めるような教材を

作成して実習の質を高め,解剖を全体的に学習しやす

くできないだろうかという考えのもと,私は学生時

代に,ひとつの試みとして,臨床解剖を実習の進度に

あわせて紹介する副読書を作成した.きっかけがある

と,同じ予習をするのでも何倍も面白く,能率も上が

るからである.心掛けたのは,作成する教材はあくま

でも予習のきっかけを提供する副読本であるというこ

とである.実習書,教科書,アトラスを活用した従来

の予習は必要不可欠である.副読書は1 冊で予習を

済ませるための教材ではなく,従来の予習に意欲的に

取り組む助けとなるものである.内容的には,◯教科

書・実習書で触れられることが少ない局所解剖や画像

解剖を紹介すること,◯豊富なイラストとともに身近

な臨床の話やクイズで臨床の風を届けて実習を楽しく

することを2つの目標として考えた.もう一点,分量

には配慮した.医学書を読み慣れていない学生が従

来の予習や実習に十分に力を入れるためにも,無理な

く読めることは重要と考えた.解剖実習書,解剖教科

書,他科目との兼ね合いで実習の進度にあわせて1~

2 日に1 項目,1 項目あたりA3 で1~2 枚を目指した.

幸運にも,私は6 年生のクリニカルクラークシッ

プの3ヵ月間にティーチングアシスタントとして解

剖実習に3 年生と一緒に参加し,教材を作成する機

会を頂くことができた.学生さんの質問を受けてまわ

り,学生さんの疑問や理解度を確かめた上で,自らの

経験で初めての実習の際にわかりにくかった箇所,臨

床の視点を知って復習したくなった箇所をあわせて項

目を考えた.学生さんからは,体腔・腹腔,脊髄・脊

椎高位差,膝のスポーツ外傷など,直接解説してほし

い項目のリクエストも頂いた.決定した項目につい

て,勉強をしてテキストやイラストを執筆した.次

に,臨床実習などでお世話になった先生方を中心に個

人的に企画の趣旨をご説明し,草稿にご指導をお願い

した.原稿を校正した上で,今度は細胞生物学・解剖

学教室の先生方にご指導頂き,解剖の教科書との整合

性に注意して再度校正した.こうしてできた原稿を,

実習室で実習の進度に合わせて学生さんに配布した.

学生さんから頂いたフィードバックを改訂に活かし,

次年度以降は実習の初めに冊子の形で配布して頂くこ

とになった.去年5 月には,医学書院より書籍の形

で出版の機会を頂いた(Fig. 1)1).

学生さんの感想としては,「臨床へのつながりを知

ると緊張感が生まれる」「実習に目標が生まれる」「学

生の疑問や学びの過程が活字になり,まとめられてい

る点がありがたい」などといった声を頂いている.反

省点としては,あらかじめ目標とする分量を決めてい

たため,学生さんからのリクエストや既存の教科書と

の兼ね合いで項目に偏りが生じてしまった点,学生時

代の著作ゆえ未熟な点も多々あると思われる点などが

挙げられる.

最後に,廣川信隆先生をはじめとする東大の細胞生

物学・解剖学講座の先生方,この企画をご支援,ご指

導くださった多くの先生方,今回発表および書籍展示

の機会を下さった衣袋健司先生,大友邦先生に厚くお

礼申し上げます.臨床解剖研究会の先生方に,ご意

見,ご指導いただければ幸甚です.よろしくお願い申

し上げます.

 

文献

1) 前田恵理子解剖実習室へようこそ,廣川信隆(監修),医学

書院,東京,2005

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魅惑の国 インドネシア

ジャカルタにあるインドネシア大学で運動器系を中心とした人体解剖実習を行っています。

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